3Dレーザー計測とは

改修工事や新設工事の現場では、「図面が古くて現況と一致しない」「手の届かない場所の寸法が測れない」といった課題が頻繁に発生します。特に電材や金属加工の分野では、ミリ単位の精度が求められるため、こうした問題は施工品質や安全性に直結します。
そこで注目されているのが、3Dレーザー計測技術です。
3Dレーザー計測とは?
3Dレーザー計測は、レーザー光を対象物に照射し、その反射をもとに空間の形状や寸法を高精度で取得する技術です。数百万点以上の座標データ(点群)を短時間で取得でき、従来の手作業によるメジャーやスケールでの計測に比べて、圧倒的なスピードと精度を誇ります。
電材・金属加工現場での活用例
電材の配管ルートや金属加工設備のレイアウト変更時、既設設備の正確な寸法把握が不可欠です。3Dレーザー計測を用いることで、図面が存在しない古い設備でも、現況を忠実に再現した3Dモデルを作成でき、設計・施工の精度と効率が飛躍的に向上します。
また、複雑な配線や配管が入り組んだ環境でも、点群データをもとに干渉チェックや施工シミュレーションが可能となり、トラブルの未然防止にもつながります。
ここからは3Dレーザー計測の基本的な仕組みから従来手法との違い、実際の計測プロセスまで、電材・金属加工の現場で活用するために必要な基礎知識を分かりやすく解説します。
レーザー光を用いた非接触計測技術の仕組み
3Dレーザー計測は、レーザー光を対象物に照射し、反射光の情報を解析することで三次元座標を取得する先進的な計測技術です。レーザースキャナーから発射されたレーザー光は、対象物の表面で反射し、その反射光が戻ってくるまでの時間と照射角度を精密に測定します。
最新の3Dレーザースキャナーでは、1秒間に約3万回から最大200万点の座標データを取得することが可能で、1つの観測点につき、およそ20〜30分で計測作業が完了します。また、非接触での計測のため、人の立ち入りが困難な危険箇所も計測可能で、高温・高所・危険箇所など、従来の手法では測定困難な環境でも安全かつ正確な計測が実現します。
内蔵カラーカメラにより360度写真撮影も同時に行い、点群データに色情報を付加してよりリアルな3Dデータを生成できます。これにより、単なる座標データではなく、視覚的に理解しやすい3Dモデルの構築が可能となります。
従来の測量・計測手法との違い
従来の測量・計測手法と3Dレーザー計測には、作業効率、精度、安全性、データの網羅性において大きな違いがあります。
作業効率の劇的な向上
従来の手法では、メジャーやノギス、トータルステーションを使用した点的な計測が中心でした。複雑な設備や配管システムの場合、数百から数千の測定点が必要となり、数日から数週間の作業期間を要していました。一方、3Dレーザー計測では、対象物のあらゆるポイントを瞬時にスキャニングし、現場での計測作業を大幅に短縮できます。
精度の大幅な改善
手作業による計測では、測定者のスキルや環境条件により精度にばらつきが生じやすく、一般的に±数mmから±数cmの誤差が発生します。3Dレーザー計測では、測定範囲は150mで測定精度は10m先で±1.0mmの高精度計測が可能で、特に高性能機種では誤差1mmの高精度のスキャニングを実現できます。
安全性の確保
3Dレーザースキャナー測量は、対象物に直接触れること無く計測できるため、現場の安全性が向上します。従来手法では足場の設置や設備停止が必要でしたが、レーザー計測では安全な場所から遠隔での計測が可能です。従来、高所での調査で必要であった足場設置が不要であり、労働災害リスクの削減ができます。
データの網羅性と客観性
従来の手計測では、測定箇所の選定や記録方法に主観が入りやすく、後の検証が困難でした。3Dレーザー計測では、現場を丸ごと計測することで、縦・横断面に限らず、あらゆる角度の断面データを取得できるため、客観的で再現性の高いデータが得られます。
点群データから3Dモデル生成までの流れ
3Dレーザー計測で取得されたデータは「点群データ」と呼ばれ、これを実用的な3Dモデルに変換するまでには、体系的な処理プロセスが必要です。
ステップ1:生データの取得
レーザースキャナーにより、対象物の表面上に無数の点として三次元座標データが記録されます。各点には座標情報(X、Y、Z)に加え、反射強度や色情報も含まれます。プラント、船舶など、大規模な構造物はもちろん、高所や狭隘部など、一般的な計測法では困難であった対象物でも正確なデータ取得が可能です。
ステップ2:複数スキャンデータの統合
複雑な形状や大規模な対象物では、複数の位置からスキャンを行います。これらの個別スキャンデータを共通の座標系に統合し、一つの完全な点群データセットを作成します。この過程で、各スキャンデータ間の位置関係を正確に把握し、継ぎ目のない連続したデータを構築します。
ステップ3:座標変換・位置合わせ
既知点に3Dレーザースキャナーもしくはターゲットを据え、点群を世界測地系などの座標に合わせ、既存の2次元CADデータと合成します。これにより、既存の設計図面や測量データとの整合性を確保し、新旧データの比較検討が可能となります。
ステップ4:3Dモデルの構築
点群データから実際の3Dモデルを生成します。図面のない設備(施設)に対しても、アズビルト情報を短時間で取得することが可能です。点群データからアイソメ図、平断面配置図、各種計画図を作成でき、失われた図面の復元や現況把握を実現します。
計測の制約と留意点
3Dレーザー計測は優れた技術ですが、物理的な制約も存在します。
計測困難な対象物
光沢があるもの、黒いもの、透明なもの、鏡などは撮影できません。これらの材質では、レーザー光が正確に反射されず、座標データの取得が困難となります。そのため、計測前に対象物の材質や表面状態を確認し、必要に応じて表面処理や代替手法の検討が必要です。
環境条件の制約
降雨時、粉塵が舞っている場所、防爆エリアなどは撮影できません。これらの環境では、レーザー光の伝播が阻害され、正確な計測が困難となります。ただし、暗い場所は計測できますが、画像はモノクロになります。
データ処理の重要性
取得した点群データには、環境要因や機器特性によるノイズが含まれる場合があります。高品質な3Dモデルを構築するためには、適切なデータクリーニングと処理技術が不可欠です。
3Dレーザー計測は八州電工へお任せください!
3Dレーザー計測は、従来の計測手法を大きく上回る精度と効率性を実現し、電材・金属加工業界における設計・製造・施工・保守の各段階に新たな価値をもたらします。
高所での調査においては、これまで必要だった足場の設置が不要となり、危険エリアでの安全確保が可能になります。さらに、取得した高精度な3Dデータをもとに机上での検討が可能となるため、設計変更が生じた場合でも再調査の必要がなく、作業の効率化と工期の短縮に貢献します。
八州電工では、この3Dレーザー計測技術を活用し、計測後の耐震計算から電材の製作までをワンストップで対応しています。現地調査・計測のご依頼は、ぜひ安心してお任せください。


